「南京事件」も回顧

「拝謁記」には、日中戦争のさなかに日本軍が略奪などを行い、一般住民や捕虜を殺害した「南京事件」について、昭和天皇が言及する様子も記されていました。

目次

ウス/\聞いてはゐた

昭和27年2月20日の拝謁で、昭和天皇は「私ハ反省といふのは私ニも沢山あるといへばある」として、まず太平洋戦争でアメリカとイギリスに宣戦布告した際の詔勅の文言について悔いが残っていると述べたうえで、「南京事件」に言及したと記されています。

この中で昭和天皇は「支那事変で南京でひどい事が行ハれてるといふ事をひくい其筋(そのすじ)でないものからウス/\(うすうす)聞いてはゐたが別ニ表だつて誰もいはず従つて私は此事(このこと)を注意もしなかつたが、市ケ谷裁判で公ニなつた事を見れば実ニひどい。私の届かぬ事であるが軍も政府も国民もすべて下剋上とか軍部の専横を見逃すとか皆反省すればわるい事があるからそれらを皆反省して繰返したくないものだ」と述べたと記されています。

専門家「軍や国の体質・あり方考える材料」

これについて拝謁記の分析にあたった歴史家の秦郁彦さんは「南京事件について当時、ちょっと聞くには聞いたというニュアンスだろう」と話しました。

また、日本大学の古川隆久教授は「これはこの段階での昭和天皇の正直な認識だと思う。うすうす聞いていたけど止めなかったというところについては、道義的な批判が出る可能性はあるが、むしろ、うすうすしか報告が上がってこないという戦前の軍や日本の国の体質やあり方を考える材料として考えた方がいい」と述べました。

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