若手研究者にもコロナの影 海外留学目前に延期 

博士課程在籍時の西村涼さん(左)と指導教官の内田欣吾教授=昨年11月
博士課程在籍時の西村涼さん(左)と指導教官の内田欣吾教授=昨年11月

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は若手研究者の活動にも暗い影を落としている。今春、龍谷大大学院理工学研究科の博士課程を修了した西村涼さん(26)は4月下旬からオランダの大学で研究生活を始める予定だったが、渡航制限を受けて延期を余儀なくされた。国内では緊急事態宣言が解除され、少しずつ日常が戻り始めたが、いまだ渡航のめどが立たない状況。それでも西村さんは「今できることをやるしかない」と前を向く。(花輪理徳)

 西村さんは光を当てると形状や性質を変える結晶についての研究に従事。博士課程進学と同時に、優れた若手研究者に研究奨励金を支給する日本学術振興会の特別研究員(DC1)に採用された。今春、通常は3年かかる博士課程を2年で修了。「分子機械の設計と合成」で2016年のノーベル化学賞を受賞したベルナルド・フェリンガ教授が在籍する世界最先端の研究拠点として知られるオランダの名門、フローニンゲン大への留学が決まった。

 留学は来年3月末までの約1年間の予定で、給料は出ない訪問研究員としての立場だが、成果次第で次の1年間はポストを得られる可能性もある。「思ってもみないチャンス。厳しい世界だけど、経験は無駄にはならないはずだ」。期待に胸を高鳴らせて出発の日を待っていたが、感染拡大の影響で予定していた4月20日の飛行機のフライトがキャンセルとなり、渡航の見通しが立たなくなってしまった。

 西村さんは「そのころには、日本よりもヨーロッパの方が深刻な状況だった。大学が閉鎖されていて、9月まで授業が再開しないと聞いた。とても受け入れてもらえる状況じゃないと思った」と振り返る。

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