ロバートキャンベル 井上陽水英訳詞集

作品テキストの英文を作っています。私の英語力は永遠の初中級レベル。日常に英語力の必要がない(言い訳です)私は、たまにダラダラとアプリで勉強するだけ。一向に上達しません。

今回は詩的表現が多数あるため自分で翻訳しようと決めたものの悪戦苦闘。その折この本をたまたま見つけました。

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本が、必要に応じて向こうからやってく来ることありませんか?本屋をフラフラするとなんだか呼びかけられているような、その棚を見ると気になるタイトルが。

日本人がもつ時制感覚。自分たちが気に留めていないものの、西洋文化から見るとかなりユニークに感じるという肌に染みついた森羅万象の感覚。それを言葉にした時の英訳の壁、それはそれは大きな壁。写真家や画家なら経験があると思います。

キャンベルさんは西洋人の文章や物事、その捉え方の違いをわかりやすく、様々なかたちを挙げて教えてくださいます。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

言わずと知れた川端康成の「雪国」。この一文だけで、日本人である私たちは様々な情景や予感、含み、そして美しさを感じます。放映されていたドナルドキーン氏と川端氏の対話も例に上げ、キーン氏が「どこに主語があるのだろう、男女の会話は何を意味するのだろう、多くの部分が曖昧なのです。」と英訳するにあたっての苦悩を告白するというエピソードは衝撃でした。(川端氏がどうお答えになったかは是非本文中でご確認くださいませ)

キャンベルさんが天才井上陽水の歌詞世界をどのように英文のピースに入れていくのか。その考え方や作業法がとても参考になりました。私は自分が持つユニークな感覚を、西洋ルールで潰してはいけないと思ってきました。この感性を肯定し、うまく言葉に起こすことに時間を必要としました。

日本古典文学を熟知するキャンベルさんだからこその愛と熱意、それに応える陽水さん。お二方がとても勇気を与えてくれる本を世に出してくださいました。

2019年9月15日記載